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BOOKS

井原西鶴の好色ものについて。

好色の戯作たち。

2013.03.30


好色二代男 (岩波文庫 黄 204-2)

井原西鶴は、「好色五大女」、「好色一代男」、「好色一代女」と読み次いで来て、現在、「好色ニ代男」を読み進めています。

「好色五大女」は、四人までが哀れな末路を迎える短編小説集。
全話に共通しているのは、それぞれに運命の転機となる出来事があり、それによって女心が劇的に変化すること。
例えば「おさん茂兵衛」では、貞淑な女房おさんが、下女にちょっかいを出す男を懲らしめようと、下女に代わって文を出し、下女の代わりに床に入っていたところ、うっかり眠っている間に男と関係を持ってしまう。
普通なら、そこで自害するところですが、男と駆落してしまう。
恐らく、おさんの女ぶりからは、それまでの亭主に飽き足らなかったと見える。
こうした、常軌を逸した女心の変化が、五人女の醍醐味だと思います。

「好色一代男」は、希代の好色男である世之介の伝記の体裁を取った、痛快な物語。
源氏物語の構成を模したと言いますが、物語性が強いのは前半までで、後半は遺産を受け継ぎ大金持ちとなった世之介の姿を通じた風俗見聞禄の体裁をなしてくる。
私は、特に前半に魅せられる。中でも怪談めいたエピソードがお気に入りです。

「好色一代女」は、現代にも十分通用する怪作。
齢を経た女の口から語られるのは、生まれながら好色に生まれ付いた女の性、色による世過ぎの人生、色仕掛けの手練手管、年老いて色衰える哀れさ、色一筋の人生の後悔。
女らしい恋愛のドラマはほとんどなく、ただ色(肉欲)のみを欲した女の人生と、様々な風俗が、乾いた視線から眈々と綴られていく。
読後、人生への無常観さえ抱かせられます。

現在読んでいる「好色ニ代男」は、「諸艶大鑑」が正式なタイトルです。好色ニ代男は副題のようなもので、実際、世之介の息子が出てくるのは初めの二編くらい。
ほとんどは色里の様々なエピソードが、各話完結という形で収められています。そういう意味では、好色一代男の後半を継承しているとも言えます。
単に色恋の話で無く、テーマはお金だったり、衣類だったりと多様であり、「鶉衣」のような俳文(今で言うエッセー)に近いと思います。
岩波文庫の原文で読んでいますので、なかなか理解し難いと思うところもあるのですが、何度も戻っては読みをしている内に、何となく分かってきます。
現代語訳までは荷が重いですが、折角なので、今後あらすじくらいは書き止めて、公開しようかなと考えています。
そんな思惑もあり、これまでに読んだ井原西鶴の色の戯作への雑感をまとめてみた次第です。


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