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其の四

BOOKS

好色ニ代男―諸艶大鑑― 井原西鶴
其の四

諸艶大鑑 巻一/二 誓紙は異見の種。

2013.04.15


好色二代男 (岩波文庫 黄 204-2)

二 誓紙は異見の種
 一 江戸京大坂初床仕掛の事
 一 雨の中宿に女良の難儀工む事
 一 新屋の小太夫古今無類志の事

遊郭ほど良い物は無いが、最初から太夫を買うべし。これ以上というものが無いので、止める時も早いであろう。
初めのテーマは、京都、江戸、大阪の初回について。
京都は寝ると見せかけて長話ではぐらかす。
江戸はそもそも布団も引かない。ただありがたいと思って帰るしかない。
大阪は、様々なルールが厳しい。太夫が振る相手には、座敷の態度もぞんざいだが、振らない相手には殊勝なもの。
禿が太夫の気持ちを読んで支度するのが面白い。
床の振るまいも慣れた男は静かだが、野暮な男は取り乱したり、飛ばしたり。
女が振るには二つの秘伝がある。振られても黙って会い続ける男もいる。人によっては、面白くないと女を変える男もいるが、心残りを持つ者が多い。
説得して別れた男とは、他の女に付け届けをしてから会うが、これはもう振るしかない。しかし、宿や遣り手から言われてなじみに戻るものだ。

言い伝えでは、女には初めから嫌と言わせない手管がある。
「今回は浮気でしょうけれど、あなたの愛情は本当のように見えます。嫌とは思わぬ人だから、この度、誓紙を差し上げます。貴方はどうですか。」
と言われれば、理性の働く男は一人もいない。

ある時、伊丹の明樽という男、五月雨の中で、杜鵑も鳴かず、会いたい太夫も来ないので、女郎に迷惑な誓紙を書けという。
思うままの条件を書かせて、これに背いたら東西の門に貼れと言う。もっときついこともあると、誓紙を巡る無理難題。

新屋の小太夫、平野橋の源は、二年も馴染んだ男に誓紙を書けと迫られたが、「好きではないので書くことは嘘ばかりになるが良いか」と突っ跳ねた。
男は腹を立てる所だが、「では惚れぬという誓紙を書け」と言い、その誓紙を受け取った。
その後、男は、半年、変わらず会い続けたが、女に、身請けの金額ほどの金を渡し、ぱったりと傾成狂いを止めた。
女からは別れの形見に、水揚げの日からこれまでの日記を大巻物で渡される。
その後、男は、子供や手代に意見する時、「惚れぬ」という誓紙を取り出し、これでも自分は、見捨て難く通った、と言う。
今の世知賢い女等があらゆる手を尽くして人を騙そうというのに、誓紙を取っても馬鹿らしいだろう。
商売を大切にして、遊郭ではただ遊ぶことだ。


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