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其の五

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好色ニ代男―諸艶大鑑― 井原西鶴
其の五

諸艶大鑑 巻一/三 詰まり肴には戎大黒。

2013.04.21


好色二代男 (岩波文庫 黄 204-2)

三 詰まり肴には戎大黒
 一 嶋原棚さがしの事
 一 夜も日傘さす事
 一 寝覚まなげふし命取事

京都、東山で、光叔や一中などは、楊弓の会も眺めて暮らしていた。夕暮れになっても、酒嫌いの人を引き留め、長座敷となれば、下戸の人から謡いだす。
昼間の桜の良い景色を、夜の嵐のなすがままにして、男ぶりの良い役者を太鼓持ちにし、もう夜は深けたけれども、嶋原に繰り出そうと言う。
深夜の駕籠は困難だけれど、小判一両なら安全に行ける。それは安いものだと、嶋原に赴く。
もう揚屋町は寝静まっている。二十三夜の月が上って、客のない女郎が拝んでいるのも役に立たない信心だ。
それを見て、「親方へ少しずつでも金を返せばいいのに。今更、天神顔などしたって」と小川の糊屋の女郎が、誹る。
その様子に、光叔らの一行は、糊屋の女郎が、さては男に振られたなと大笑い。
扇屋を覗いて見れば、深夜なのに、鰹節を削るすり鉢の音。暗がりには、美しい太夫の初音が折梅の肌着で、今夜は客を取っている様子。ちょっと悔しい。

一行は、柏屋の妙案という家で、一風呂浴びた後に、台所に入り込んで、そこにあるもので料理を作りはじめる。
二階から見るものがあるので、日傘で遮る。乱痴気騒ぎの様子が面白く描かれている。そして、大人数の雑魚寝。

27歳の男、家が欲しい、五十両貯めたいと常々願っているが、叶わない。三月十五日、これから万日の廻向だと薬罐を叩いて責め念仏。今夜も、郭に泊る。夜の内に帰らぬは無分別である。ある賢い人は言った。嶋原は、五つから昼までは宿も休みの時間。ぶらりと、居るところではない。

尤もの伝助、嵐右衛門、その他、二、三人、大名に金を貸す男たちが、唐土という太夫を囲んで奥の二階に上がっていたけれど、下京の若者たちの早口に目覚めて、全て台無しとなった。
さっさと店を変えて、薄鍋に醤油を垂らして日本一の吸い物ありとのたまう。那波屋の何がしという男、恵美酒、大黒の像を下して、これにもなまぐさものをと、焼き魚をあつらえ、大黒の部位になぞらえて分ける(こんなとこだと思う)。
いつとも知らないうちに夜が明け、青ざめた顔色では、面白くない。朝日が出るまで、猩猩のように飲み続ける。はじめの内は、わざとよろけて謳ったけれど、後には本当によろけて、頼みもしないのに五月の節句買い(三日買い)の約束をし、衣替えの呉服物の代金も言う通りに与える。四月の内は太夫も独り占めするなどと良い事ばかりを申す。この夢の間に、何でも欲しいものがあれば言え。夢は覚めるものだから。


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