Home > photos一覧 > 北千住。雨の宿場町通りを歩く。
午前11時、その日の予定が不意に流れて、東武伊勢崎線某駅のホームに立っていた。空からは、春の小雨が途絶えることなく降り続く。ぽっかりと空いた時間に、真っ直ぐ帰るのもつまらないので、北千住で下車。このところ運動不足なのである。
北千住の西口の商店街や、線路沿いの飲み屋街は、何か掘り出し物の店がありそうで、いつもわくわくさせられる。
駅を出て左側の賑やかな路地を折れて歩けば、やっちゃ場跡などを通り過ぎ、社寺仏閣を覗きながら、隅田川を渡って南千住に至る散歩コースとなる。都電の荒川線三ノ輪から雑司ヶ谷に至れば、池袋の自宅までは一本なのだ。しかし、今日は、雨がちでもあるし、巨大なキャスター付きバッグも持っている。軽い散歩のつもりで駅を降りたのだった。
商店街の入り口を眺めていると、「宿場町通り」の看板が目に入ったので、今日はこちらに曲がってみることにした。千住駅西口から出て右手方面は、荒川土手に付き当る。延々と土手を歩いたことはあるけれど、この通りに注目したことは無かった。
雨もだいぶ上がりかけていたが、観光案内所のようなものが目に入ったので、飛び込んでみた。宿場町通りの由来でも分かるかもしれない。入ったのは、足立区が運営する「宿場町通り・道の駅」。お化け煙突や昔の北千住駅の様子など、往時を慕ばせる写真が沢山展示されている。
案内の女性に、宿場町通りが旧日光街道であること、震災や空襲にも焼け残った地域であることなどを聞く。数は少ないが、江戸・明治・大正時代からの建物が残るという。この道の駅の建物も、明治か大正(聞き逃した)時代の魚屋で、土間は、水が流せる作りになっている。もう少し、館内の写真を詳しく眺めたいと思ったけれど、つい一生懸命な説明に押されて、ガイドマップやパンフレット類を沢山頂いて、その場を後にした。
確かに、古びた風情を漂わせる建物が散見される。但し、掲示板の無い建物は、それが戦前のものなのか、昭和のものなのかは覚束無い。建物から時代々々の町並みを空想するする楽しさはある。
さて、散歩の醍醐味は、やはり脇道にあると私は思う。道を歩く時は、いつも興味をそそりそうな脇道は無いかと、伺いながら歩いている。最初に目に付いた鳥居に向かって左折すると、大黒天の文字。これは、氷川神社の元の社殿で、本氷川神社と呼ばれている。後に訪れる氷川神社の元の場所ということだろうか。
宿場町通りに戻って歩を進めると、今度は右側の路地の向こうに、寺の山門が見えたので、右折してみた。雨でひときわ閑静に見える、長円寺の山門の傍に、小さな祠があった。これがこの日、一番の収穫、「めやみ地蔵尊」である。この日記の一枚目の画像や、祠の画像の通り、眼病治療の信仰を集めている地蔵尊であることは、見た目で分かる。これがどうしてここに伝わり、何に由来するのか、ちょっと興味をそそられる。疑問をそのままに、境内に入ると、石仏たちが、雨ならではの風情を醸し出していた。
長円寺の隣に、氷川神社の境内が開けていた。
再び、宿場町通りに戻って荒川土手前まで歩く。掲示板のある「横山家住宅」や「絵馬屋」は、概略を知ることができるが、説明の無い民家にも、宿場町の面影を留めるものがあった。
荒川土手を見極めて、駅の方へ戻ることにした。貰ってすぐカバンにしまい込んだガイドブックを見ると、見落とした建物などもあったようだ。
しかし、偶然、雨の日、この地を歩いたのは、良かったのではないかと思う。宿場町通りの大半は、新しい建物だし、天気が良ければ、それなりの人通りもあっただろう。雨のお陰で、人出はいつもより少なく、また、目にするものの情感も際立ったように思われる。
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